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2023/11/12
日本茜
少し肌寒くなり、背中にポカポカとあたる西陽が心地良い季節です。 里山の景色は黄色。夏の間繁茂していた草藪も勢いが落ち、木になっている柿が日を追うごとに赤くなり甘さを増しています。稲刈りが終わり、すれ違う村人の表情も柔らかく、心は達成感、成熟感に満ちています。 そんな穏やかな空気に包まれながら裏庭にて日本茜を少しづつ掘り上げ、洗って乾燥させています。日本茜は、岩の間に多く自生し、偶然にも我が家の裏庭は岩山なので茜がのびのびと繁茂しています。 ギャッベやトライバルラグに使われる赤の染料はローナスと呼ばれる西洋茜。日本茜と比べ根は太く、アリザリンという赤の色の元となる成分が多く含まれるので、鮮やかな赤の発色をします。情熱的な赤です。イランの夕日はこんな赤色をしているのでしょうか。 一方日本茜はアリザリンだけではなく黄色がかったプルプリンという成分も含まれるため、サーモンピンク、夕日の色になります。染める時は何度も重ね染めをしなければなりませんし、堅牢度も低いため色落ちも早く、工業製品には向きませんが、そういう儚さも含めて、日本人の心を長きに渡り捉えてきました。儚くも優しい、まさに黄昏時のよう。わたしもそんな日本茜の色を愛しく思うひとりであり、毎年この時期になると根っこを集めて染めものをします。作業していると五感を通して慈愛のエネルギーがふわぁっとわたしたちを包みます。 日本茜は、古来より薬用として用いられ、とくに浄血、解毒、強壮の作用があるとされ、世界各地で女性特有の病気に役立てられてきました。 また服用という言葉があるように男性はふんどし、女性は腰巻きを茜で染めていたそうです。 丹田が温まって活力が湧きそうですね。 茜を掘っていると、土の中から甘くて苦い香りがします。胸の辺りと子宮にダイレクトに熱を運ぶような香りです。また、葉っぱがハート型をしており、♡と言えば心臓や子宮のシンボルマークです。植物はとてもわかりやすい方法でわたしたちにメッセージを送っているのです。 陰極まる冬至前後、茜に触れ茜を感じ、身も心も暖かく春に向かっていきたいです。