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2023/09/24
4児の母がギャッベと暮らしまわりのお店を始めるまで
はじめまして。ヒルネノネの店主あやのです。私はギャッベと、旅を通して出会った手仕事で作られた品々を取り扱うお店をしています。 今回ブログを開設しモノにまつわる事や、日々思うことを綴っていこうと思います。 まずは私を魅了し続けるギャッベについてのお話をします。 ギャッベに出会ったのは、20年以上前、高校生のころでした。その魅力に引き込まれ、「いつかは自分の家にも」と心に決めていました。 7年前、サラリーマン生活を終え、家族で限界集落への移住を果たしました。古民家のリノベーションやハーフビルドに挑戦し、集落のおじいちゃん大工と一緒に異文化交流を楽しみながら住処や事務所、宿泊施設を手掛けました。その際、私の頭の中にはギャッベをどこにどう配置するかというイメージが常にありました。内装はなるべくシンプルにし、色鮮やかなギャッベや、きなりの原毛のギャッベが映えるよう心がけました。珪藻土や漆喰でナチュラルな壁を仕上げ、無垢の木や一枚板、タイルを駆使し、手仕事の温かみを感じられる空間を目指しました。私自身も、木の加工やオイル塗り、左官作業など、多くの作業に参加しました。 外構には、土の家を彷彿とさせるイラン発祥のアースバック工法を取り入れ、ギャッベが敷かれた庭でお茶を楽しめるような空間をつくりました。イランの映画で見た風景がインスピレーションとなっています。 5年以上の歳月をかけて、心を込めて作ったこの空間には、やはりこだわりの家具やギャッベを配置したいと考えていました。そして、緑色のリビングサイズのギャッベとの出会いがあり、私のギャッベの旅が始まりました。その後、ギャッベのお手入れや知識を深めていく中で、自分の原点を再確認し、好きが高じて、ギャッベ屋を開業する決意を固めました。「なぜギャッベにこだわるの?」との質問を受け、初めてその答えを考える機会がありました。ギャッベが好きだということは当たり前すぎて、今まで言語化してこなかったのです。そこで、改めて自分の中のギャッベへの思いを振り返ります。 その存在を初めて知ったのは高校生の頃に美術大学を目指していた時期にさかのぼります。毎日アート関連の本を読んでおり、その中で出会った『GABBEH ART(ギャッベ・アート)』という本に強烈な印象を受けました。その本には、イランの遊牧民が作る草木染めのギャッベが写真として多数掲載されており、その鮮やかな色彩、シンプルながらもカラフルでプリミティブな絵画のような表現に魅了されました。それはまるでフンデルトワッサーの絵画のようであり、原色と原色が調和している不思議な色使いが心を打ちました。自然との調和から生まれるものなのか、独特なリズムとメロディを持っており、人間の根源から湧き出てくるような本質的な表現でした。言葉でうまく表せませんが、ビビッとからだが震えました。砂漠の中で生きる遊牧民の女性たちが、広い空の下で何かに感動し、魂を震わせて絨毯を織っているんだろうなあと想像を掻き立てられ、その魅力に引き込まれたのです。 当時、私は受験の渦中にあり、試験のためだけの絵を描く日々でした。ずっと学校や社会のルールに縛られ、慎重に生きることが正しいと教えられていました。しかし、この出会いによって、その自由さやおおらかさに心を打たれ、私のいる世界とは明らかに異なる時間軸での生き方、世界観や価値観があるということが伝わってきました。この経験が、旅を愛するきっかけともなりました。 当時から、自分自身を等身大で表現し、自由に、正直に生きることに憧れていました。ギャッベは、そのように思い描く姿や表現とそっくりでした。 美術の大学では、手工芸に魅了され、工芸科に進み、ギャッベにお近づきになるためにテキスタイル学科で羊毛や染織の技術を学びました。その後、アパレル関連の仕事に就き、同時に織りながら生計を立てる日々を送りました。しかし、結婚し、4人の子供を育てる中で、目の前のことに追われ、その頃の情熱を忘れかけていました。15年後、偶然にも部屋にギャッベを迎え入れたことが、私の心の火を再び灯すきっかけとなりました。そして、糸紡ぎや染色、織など羊の毛と戯れ、ギャッベに囲まれた生活をすることを決意しました。 数十年ぶりに手に取った『ギャッベ・アート』の本を読み返すと、遊牧生活の厳しさや家族の結束の大切さが書かれていました。日本の伝統的な生活も、家族の結束や役割を重んじる点で似ていました。イランの遊牧生活や、私が住む集落の生活。どちらも、人々の結束力や自然との共生が重要であり、私の理想とする生き方や精神性が重なっていると感じました 美しく手入れが行き届いた日本の里山と素朴ながらも力強く染織に手抜きがないギャッベは似ています。同じ香りの美しさがあります。 織機にかけるまで、今の時間軸で考えると途轍もない時間や労力がかかることがわかります。その中で未婚の女性や母親が絵を描くようにギャッベを織る作業は心から楽しく娯楽に近いような時間だったと容易に想像できます。なぜかというと、みなさんが想像するようなカタンコトンと布を織る作業は全体の1割にも満たず、その作業をするまでに、羊の毛を何度も洗い、紡ぎ、何色もの染色、整形、などなど9割の作業工程があります。それを1人でこなすことは当時20歳の私には果てしなく長く感じられました。織る作業はただただ楽しい時間でした。もちろん、草木染めで糸に色がうまく入った瞬間や、糸紡ぎなど、その一つ一つに感動はありましたが、織に辿り着くまでの作業が若者には長すぎたのでした… 少し話が脱線しました、先程も触れた通り異国の遊牧民の方々の精神性は、限界集落に住む日本人の精神性と似ています、私の住む集落は、棚田や炭焼き、里山をみんなで維持しており、山間地の扇状地なので豊かな湧き水の恩恵が得られますが、毎年梅雨時期の水害が隣り合わせです。被害があった時はみんなで協力して復旧作業をします。決して楽ではないけど、みんな底抜けに明るくて仲良く結束力があります。おおらかで自然に対する謙虚な生き方も通ずるものがあります。 人間が好きで、その営みを美しく思います。 人の真心というものは魂を揺さぶるものがあります。どんなに離れた異国の地でも、作った方々と会うこととなく、生きている時代が違ったとしても、一枚のギャッベを通してきもちが繋がることがある、これって素敵なことですよね! わたしが取り扱いたいギャッベは、そんな本気のギャッベです。とても抽象的な表現ですが「触れた時にあたたかい気持ちになるもの 、わくわく楽しい嬉しい気持ちになるもの」を取り扱います。大手企業が管理下で売るために量産するギャッベではなく、本気で創り出されたものを取り扱います。 「心地良く穏やかに本来の自分と繋がり、たくさんの人が最高に楽しい人生を歩めますように」これがわたしたち、ヒルネノネのコンセプトであり、あなたの生活空間に心地よさや温もりをお届けできたら幸いです。 愛をこめて♡